貿易ではベースレート(基本料金)を一定に保つ為、変動分はサーチャージ(追加料金)として請求される事が多々有ります。
サーチャージにも色々あるのですが、最近耳にするのはLSSと言うサーチャージ。
ではこのLSSは一体何を目的として徴収するサーチャージなのでしょうか?
LSSとは?
LSSはLow Sulphur Fuel Surchargeの略となります。
これだけでは何の事かわからないかと思いますが、日本語に訳すと低硫黄燃料追加料金となります。
低硫黄化は何の為に?
ではなぜ低硫黄の燃料としなければならないのでしょうか?
船舶から排出される硫黄分は、その濃度に比例して有害なSOx(硫黄酸化物)を発生させてしまいます。
このSOxは深刻な大気汚染や海洋汚染、また生態系への悪影響の原因となるので、これを防止する一環で低硫黄燃料への移行が求められているのです。
環境を守る為のSOx規制とは?
世界ではSOx及びPM2.5に因り、健康被害や酸性雨被害が深刻化し続けています。
その内SOxは硫黄分を含む燃料を燃焼させる事により発生するので、下記の様な対応策が求められているのです。
- 規制適合油への切り替え
- SOxスクラバーの搭載
- LNG燃料線への切り替え
この規制適合油と言うのが低硫黄燃料となる訳です。
でもなぜサーチャージ(追加料金)が必要になるのか?
今迄の船舶燃料には軽油と重油が使われていましたが、SOx規制に関わるのは重油のみです。
従来の高硫黄(硫黄分3.5%以下)の重油から、低硫黄(硫黄分0.5%以下)の規制適合油、低硫黄A重油や低硫黄C重油などとする為には、精製や脱硫により低硫黄化しなければならず、それによるコストアップは数十%と言われています。
そのコストアップ分の内から幾らかがサーチャージとして請求されると言う事になるのです。
LSSに関わるスケジュール
中国は2018年10月1日から既に、華東沿岸ECA(Emission Control Area:指定海域)内にある上海市、浙江省、江蘇省の港に寄港する船舶に対し、低硫黄燃料の規制を開始しています。
また中国のみならず国際海事機関(IMO:International Maritime Organization) は、MARPOL条約に基づき2020年1月1日から船舶の低硫黄燃料の規制を開始します。
SOx規制違反に違反したら?
2020年1月1日からのSOx規制に違反した場合、過怠金、拘留、そして極端な場合にはPSCによる入港禁止措置が可能性として上げられていますので気を付けなければなりません。
LSSのまとめ
今や環境問題は避けては通れない重要事項です。
実はSOxのみならず、NOx(窒素酸化物)など、地球を守る為にはその他に対しても様々な規制が必要とされています。
しかしながらその対策に関わるコストアップは、決して企業努力だけで吸収出来ません。
また業界の力関係で荷主側への運賃転嫁はなかなか難しいのが実情なので、国土交通省が先導して燃料サーチャージに対するガイドラインなどを公表していると言う次第です。
地球を守る為に、皆でLSSを喜んで払いましょう…ね!