あなたのPDCAはなぜ回らないのでしょうか?
仕事をしている部下や後輩に、 「 もっとPDCAを回さないと… 」 なんて、つい得意気に言ってしまったりしませんか?
わかったつもりで使っているPDCA。今更聞けないPDCA…。
そんなあなたの為に、PDCAとは何なのか、PDCAとは本当はどうすべきなのかについてまとめてみました!
PDCAの歴史
第二次世界大戦後、当たり前ですが日本の経済はボロボロになっていました。
連合国軍総司令部(GHQ)のトップであったダグラス・マッカーサーは、日本再生の為に数百人の学者を呼び寄せ、その内の一人が統計学者であるウィリアム・エドワーズ・デミング博士でした。
そのデミング博士が品質管理の為に提唱した当初のデミングサイクルが、今日にも続いているPDCAサイクルの始まりです。
尚、晩年のデミング博士はPDCAを再考し、PDSAと提唱し直していた模様です。
Checkでは無く、わざわざStudyと言い直しのは本当に深い思いがあったと推察されます。
そもそもPDCAサイクルとは?
PDCAとは、Plan-Do-Check-Actの頭文字を繋ぎ合わせて作られた言葉です。
- P = Plan = 計画
- D = Do = 実行
- C = Check = 評価
- A = Act(Action) = 改善
例えばあなたが新しいプロジェクトを始めるとします。
あなたはそのプロジェクトをどの様に進めていくでしょうか?
勿論、仕事には唯一無二の正解は有り得ません。
だから色々な進め方が有るでしょうが、いきなり考えも無く始めるよりも、大抵は計画を立てる事から始めるのでは無いでしょうか。
そしてその計画通りに進めてみて、たまに立ち止まって振り返り、ちょっとした改善を付け加えてまた進めていく…そう、それが正にPDCAなのです。
そこまで難しく考えるべき事では無く、まあいつも行っている仕事の進め方を体系化したもの、それがPDCAと考えれば十分だと思います。
それをグルグルと何回も何回も回すからPDCAサイクルと呼ばれている訳です。
PDCA項目のポイント
PDCAを正しく回す為には、それぞれの項目が何を意味しているのかをきちんと理解しなければいけません。
例えばPlanとは単純に計画と訳され、それで何となくわかった様な気になってしまうのがそもそもの問題です。
あなたは計画とは一体何かきちんと説明出来ますでしょうか?
Plan(計画)とは?
PDCAで最重要なのは、間違い無くこのPlanです。
PDCAはP、このPlanから始まります。
しかしながら冷静に考えればわかるのですが、いきなりPlan=計画を立てる事は出来ません。
計画を立てるには目標・NG・リソース・ハードルなどを正しく把握する事から始めなければなりません。
そもそもあなたが立てたプロジェクトであれば、目標やNGやリソースなどは把握しているかもしれません。
しかしながら若し任されたプロジェクトであれば、それらの前提条件をきちんと確認しなければ、そのプロジェクトはとんでもない事になりかねません。
腰を据えて徹底的に行おうと思っていたところ、実は期限が今週いっぱいであれば、それ相応のやりかたで取り組まなければなりません。
未だ半ばにも関わらず突然予算オーバーと言われてしまったら、途方に暮れてしまうのでは無いでしょうか。
ハードルを把握し、その対処を考える為には、環境変化の予測や、徹底的な市場調査が必要でしょう。
ハードルが事前にわかればそれをどの様に越えるか、若しくは越えられなかったり、わざわざ越える必要が無いのであればそのハードルから逃げた計画を考えられる訳です。
計画では目標やリソースやハードルを前提条件とし、効果的なステップを洗い出し、それぞれに対する取り組み方を明確にし、効率的に進められる順序を決め、それぞれに予算や期限を設定しなければならないのです。
Do(実行)とは?
たまにPDCAのDを行動と訳しているのを見ますが、これがPDCAを回す際に混乱を引き起こす一因となってしまっている様な気がしています。
兎に角行動するだけであれば、次のCheckやActが出来る訳もなく、PDCAは回らなくなってしまいます。
それでは行動と似て非なる、実行とは何が違うのでしょうか?
実行とは読んで字の如し実際に行動すると、実際と言う言葉が付いています。
この実際と言うのがとても大切で、実際とは頭の中で想像した事や考えた事なのです。
つまり単に行動するのでは無く、考えた通り=計画通りに行動するのが実行なのです。
行動では無く実行だから、次のCheck-Actと繋がっていくのです!
Check(評価)とは?
Checkでは基本的に計画通りに行動したか、その結果はどうだったのかを確認します。
- 計画通りに行動したものは?
→計画通りに行動して、結果が十分だったもの
→計画通りに行動したが、結果が不十分だったもの
→計画が悪かったのか?
→何か想定外が発生したのか?
- 計画通りに行動しなかった、行動出来なかった事は?
→なぜ行動しなかったのか?
→なぜ行動出来なかったのか?
Checkでのポイントは記憶では無くて、記録での確認です。
きちんと実行時に記録をつけておかなければ、曖昧な記憶でのCheckとなってしまい、結果としてあまり意味の無いものとなってしまいます。
定性的な感覚では無く、定量化された記録を見ながらのCheckとなる様に心掛けて下さい。
Act(改善)とは?
Checkの際にみつけた問題に対して、その原因を考え、その原因に対しての改善策を考え実行するのがActとなります。
よくある間違いは、問題に対して原因も考えずに対症療法をしてしまう事です。
対症療法では全く同じ問題は発生しなくなるかもしれませんが、抑え付けられた原因が別の大きな問題を引き起こしてしまう事でしょう。
きちんと問題を色々な角度から分析し、原因を究明した上で、その原因に対する根本療法となるActとしなければ状況は改善されないので注意しましょう。
※因みにActと言う動詞では無くて、元々はなぜかAction と言う名詞が使われていた様です。
他のPlan-Do-Checkまでは動詞で、Actionだけ名詞と言うのは何か気持ち悪いですよね。
PDCAの弱点
PDCAでよく言われている問題の一つが、Planにやたらと時間を掛けてしまい、結局は何も始められないと言う事です。
日本人は慎重なので、気質的に特にそうなってしまうのかもしれません。
しかしながら今の世の中は移り変わりが激しい、VUCAな時代と言われています。
VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を繋げて作られた言葉です。何かわかりますよね。
VUCAな時代でPlanに時間を掛けているとどんどんと前提条件が変わっていってしまいますので、考え過ぎるといつまでもPlanが完成する事は無い訳です。
だから今のVUCAな時代では特に、仮説思考や OODAループの様な小さなサイクルをグルグル回す方が実践的かもしれません。
しかしながらPDCAも仮説思考もOODAループも、本質的には同じものではないかと思っています。
PDCAには幾つかの派生系が有りますが、その中の一つであるCから始まるCAPDの考え方はOODAループとほぼ同じと感じてしまいます。
VUCAな時代では兎に角Dから始めてみるDCAPの順でサイクルを回し始めた方が更に実践的かもしれません。
その様に考えていくとPDCAはPから始めなければと思い込んでしまうと、VUCAな時代では特に大きな弱点となってしまうので、PDCAは好きなところから回していく様にしていけば弱点も克服されるのでは無いでしょうか。
PDCAのまとめ
PDCAと言われると難しく響きますが、日本語でも試行錯誤、 英語ではTry & Errorと言う言葉は日常化しています。
仮説思考もOODAループも同じで、やるからには考えましょう、たまには立ち止まって振り返り、やってダメだったら反省して改善しましょうと言う事なのだと考えます。
今やVUCAな時代なので、近未来にはどの様な技術革新が有るか想像も付きません。
だからゆっくり1年掛けて1回転の様な大きなPDCAサイクルではリスクが有り過ぎます。
改善の為には一つでも多く回す事が重要なので、成功の鍵は最小高速大量回転による回転数の最大化なのでは無いでしょうか。
是非、競合より一回転でも多いPDCAサイクルを回す様に頑張っていきましょう!