祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす
奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし
猛き者も遂には滅びぬ、 偏に風の前の塵におなじ
これはかの有名な平家物語の始まりです。
若し強者がずっと強者のまま居続けたら、きっと世の中はつまらなくなっていたでしょう。
強者には強者の理由が有ります。
しかしながら歴史が証明しているのが、 ” 盛者必衰 ” 。
歴史を動かした、弱者が強者を倒す為に駆使したのが戦略なのでしょうか?
そもそも戦略とは?
戦略(せんりゃく、英: strategy)は、一般的には特定の目的を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・応用科学である
Wikipediaより
ここで改めて大前提です。
若しリソースが無限にあったら..まあそれは有り得ないので、いずれにせよ潤沢にあるとしたら戦略は必要なのでしょうか?
答えはNoなのだと思います。
きっとですが、只やり続ければいつかどうにかなるのでは無いでしょうか。
現実の話としてはリソースが絶対に限られているので、例えば人手が限られていたり、いつまでに完了させなければならないと時間が限られているので、効率的に戦わなければ勝てないので戦略が必要になるのです。
戦略とは戦いを略すと書きます。
その文字が表す様に、戦うべき所に集中する為に、しなくても良い戦いを避けるのが戦略なのです。
戦略→作戦→戦術→戦闘
戦略とセットで使われる言葉には、作戦や戦術や戦闘があります。
戦略と言う言葉は特に、巷ではよく見たり聞いたりする機会が多いのですが、結構混乱して使われている様な気がします。
軍事的な定義は複雑過ぎるので、ここではビジネスで使え、且つわかり易い定義としていきたいと思います。
作戦とは?
戦略は戦いを略する為の概念・方針・大目標を掲げているのに対し、戦略を実行可能な、具体的に戦いを作るのが作戦なのです。
戦略を達成する為に、作戦は複数あって然るべきです。
戦略がKGIとすれば、作戦はKPIの様な関係です。
戦術とは?
作戦として作られた戦いを、効果的に勝つ為の術が戦術です。
例えばサッカーの試合に勝つ為に考えるのは、戦略でも作戦でも無く戦術です。
目の前に作られた戦い=試合に、勝つ術を考える訳ですから、正に戦術ですよね。
戦闘とは?
戦闘とは、実際の戦いです。
先程のサッカーの例えを続けると、作戦は机上のものですので、試合が始まる前までは作戦であり、実際に始まれば戦闘と言う事になるのかもしれません。
試合の中の個々の局面の戦いを有利に運ぶ工夫は戦法と呼べるでしょう。
戦略の種類
一口に戦略とまとめてしまうのは大変危険で、それぞれ戦略はその種類によって性質は全く異なります。
競争戦略
戦略と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、この競争戦略では無いでしょうか?
ライバルに打ち勝つ為の戦略が競争戦略となります。
そのライバルなりの、ライバルとの関係に適した戦い方を選ぶのです。
例えば自分が強者であれば真っ向勝負を仕掛けるべきですし、逆に弱者であれば真っ向勝負は避けると言う様な戦略の立て方が基本となります。
ポジションを考慮した競争戦略
業界内のポジションと保持するリソースを考慮すると、それぞれを以下の4つに分類する事が出来ます。
- リーダー = 業界1位 = 高品質x大量のリソース
- チャレンジャー = 業界2位 = 低品質x大量のリソース
- ニッチャー = 業界中位 = 高品質x少量のリソース
- フォロワー = 業界低位 = 低品質x少量のリソース
ライバルを倒すだけを考え過ぎると、どうにかライバルを倒したとしても自社も死に体となってしまい、結局は共倒れとなってしまえば、一体何をしているのかわからなくなってしまいます。
だからポジションを考慮して、例えばチャレンジャーは二番手なりに、ニッチャーは差別化した一部分のみを、フォロワーはおこぼれで良いみたいにそれぞれ甘んじる事で、悠々と生き延びると言うのも一種の競争戦略となります。
成長戦略
今迄よりも良くなる=成長を目指した戦略です。
だからその内容は、ライバルと言うよりも自社にフォーカスした戦略となります。
競争戦略は只ライバルに勝つ為の戦略なので、この成長戦略は競争戦略の上位戦略と言えそうです。
国家戦略では第一にこの成長戦略を唱えますよね。
商品戦略
企業が売上を向上させる為に、どの様な新商品を出したりすべきなのか、どの既存商品をテコ入れすべきなのかを考えるのが商品戦略です。
無邪気に商品を増やしてもコストが増えるだけで、自社内商品同士が共食い=カニバリゼーション(Cannibalization)を起こしてしまい、売上がメチャメチャになってしまうと言う事も珍しく有りません。
営業戦略
商品戦略と同じく、企業が売上を向上させる為に、どの様な営業をすべきなのかを考えるのが営業戦略です。
人・モノ・金・情報などの限られたリソースを駆使し、最も効果的に売上が上がる道を探すのが営業戦略となります。
営業戦略は具体的にどの業界のどの様なお客様を狙うのかの決定が中心となります。
有名な戦略家は?
彼を知りて己れを知れば、百戦して危うからず
戦略を知り尽くした孫子ならではの、戦略の本質を突いたとても有名な名言で、ライバルと自分の実力差等々を知っていれば、決して勝てるとは言ってはいませんが、百戦してもやられる事は無いと言っているのです。
不確実性の高い戦いを、百戦もですよ!
因みに孫子とは中国の春秋時代、呉の闔閭に仕えた軍略家である孫武の尊称です。
孫子は自ら考案した戦略を、現代では孫子の兵法書と呼ばれる書物に記し、その内容は現代にも読み継がれています。
あのソフトバンクの孫社長も、孫子の兵法書の熱心な愛読者で、応用して孫の二乗の法則を唱えているくらいなのです。
中国の歴史上には孫子の他にも太公望に張良や諸葛亮孔明など、数多くの名軍略家が名前を連ねています。
一方、欧米では1800年前後に活躍した、プロイセンの軍事学者で戦争論と言う書物を残したカール・フォン・クラウゼヴィッツが有名です。
唐突ですが私が好きなのは1900年代に活躍した、あのランチェスターの法則で知られるフレデリック・ウィリアム・ランチェスターです。
なぜならばランチェスターこそが、弱者の戦略を明確に教示してくれているからです!
そしてビジネス戦略で言えば、米国のマイケル・ポーター博士が断然有名です。
ポーター博士が唱える3つの基本戦略(①コストリーダーシップ戦略、②差別化戦略、③集中戦略)は、現代の経営者にかなり大きな影響を与え続けています。
ビジネスに於ける戦略→作戦→戦術→戦闘のまとめ
山登りと言う比喩的でまとめてみたいと思います。
- この山をなぜ登るかと言う決定が戦略
- A地点→B地点、B地点→山頂と言う決定されたルートが作戦
- その具体的な登り方が戦術
- 実際に登るのが戦闘
- 登る時の工夫が戦法
ビジネスに於ける営業戦略で考えてみると、
- この業界、この様なお客様群を攻める、なぜ攻めるかと言うのが戦略
- 具体的にこのお客様を攻めると言うのが作戦
- そのお客様の攻め方、アプローチの仕方が戦術
- そのお客様との実際の商談が戦闘
- セールストークが戦法
やらない事を決め、やる大局観を決めるのが戦略と考えるのが収まりが良さそうな感じです
別の記事では戦略の醍醐味、弱者が強者を倒す為の戦略と言うのをまとめていきたいと思います。