この記事では貿易の基本となるインコタームズの中のFOBと言う貿易条件について、以前の自分が知りたかった事を本気で解説していきたいと思います。
なぜFOBが生まれたのか?
世界を股に掛ける貿易では、色々な環境の下に、様々な習慣を持ち、考え方が異なる人達の中で商売が進んでいきます。
トラブルが起きない様にコミュニケーションを行う為には貿易に於ける共通語が必要とされ、その目的の為に国際商業会議所 (International Chamber of Commerce、略称ICC)が策定したのが ” インコタームズ(INCOTERMS) ” と言う貿易条件集です。
そのインコタームズの中で謳われている貿易条件の1つが ” FOB ” であり、かなり頻繁に使用されている貿易条件なので有名なのです。
※国際商業会議所:ICCのサイトはこちらです。 https://iccwbo.org/
このインコタームズの中にはFOB以外にもお馴染みの” EXW ” や ” C&F ” や ” CIF ” 、そして ” FAS ” や ” DDU ” などありとあらゆる貿易条件が記載されています。
※EXWについてはEXW (Ex Works) は輸出者が一番楽な貿易条件と言う記事に詳しく書いていますのでそちらを参照下さい。
FOBと言う貿易条件とは?
FOBとはFree On Boardの略で、日本語ではよく ” 本船甲板渡し条件 ” と訳されます。
商売を単純化すれば、それは売り主と買い主の間の物品や責任者お金のやり取りと考えられます。
FOBではその責任の切り替えを、簡単に言えば本船の甲板に載るまで売り主が持ちますよと言う貿易条件なのです。
以前は ” 本船の手すりを越えた時 ” と言う表現が使われていましたが、2010年以降は ” 本船の船上=甲板に置かれる ” と変わりました。
もう昔の笑い話なので今更考える必要は無い訳ですが、万一が起きた際、本船の手すり(Ship’s Rail)を越えた越えていないと言うのは誰が判断するつもりだったのでしょうか?
そもそも英語では ” On Board ” と言っていますから、新しい方が訳としてもしっくり来ますし、明確なので実用的ですよね。
” FOB 〇〇 ” の〇〇とは何を意味するのか?
インボイスなどの船積書類の中では ” FOB 〇〇 ” 、例えば ” FOB Tokyo,JAPAN ” と記載されています。 これは東京港の本船の船上に置かれる迄は、売り主の責任であると言う事を表しているだけです。
同じFOBであっても受け渡される港が異なれば、条件が全くと言ってよいほど異なるかもしれませんので気を付けなければなりません。
FOB価格とは?
更にインボイスにはこの様に書かれていたりします。
- FOB Tokyo,JAPAN : USD 10,000.-
この ” USD 10,000.- ” と記載されているのがFOB価格となります。
” 商品の代金は、東京港の本船の甲板に載せるまで責任持つところまで含めて1万米ドル ” と言うのが、この場合のFOB価格となります。
FOB価格には保険料が含まれていない
貿易では多くの業者、多くの人達が介在し、長い距離を物品が移動する訳です。その間には数多くのリスクが存在し、本当に何が起こるかわかりません。
商売として安定させる為には万難を排さなければなりませんので、貿易では保険を掛けるのが通常です。
しかしながらFOBと言う貿易条件では、本船の船上に置かれた以降は買い主の責任です!
即ち、船に載った以降に事故が起きたら、買い主が全て責任を追わなければならない訳ですから、万難を排す為に買い主は海上貨物保険以降を自分で手配しなければならない訳です。
FOBとEXWやCIFとの違いは?
その他に有名な貿易条件で ” EXW ” や ” CIF ” と言うのを聞いた事が有るかもしれません。
- EXW ・ ・ ・ Ex Works = 出荷工場渡し条件
- FOB ・ ・ ・ Free On Board = 本船甲板渡し条件
- CIF ・ ・ ・ Cost, Insurance and Freight = 運賃・保険料込み条件
FOBを中心に EXW < FOB < CIF と言う関係になります。
貿易条件がEXWとなると、買い手は海外の工場までどうにかして取りに行かなければいけないのでしんどいですよね。
だから国際貿易ではFOBが必要最低限の貿易条件と感じています。
- EXW + 本船の甲板に載せる迄 = FOB
- FOB + 船積運賃(Freight) + 海上貨物保険(Insurance) = CIF
いかがでしょうか?
FOBを中心とした足し算で考えるとわかり易く無いでしょうか?
FOBと言う基本の貿易条件をきちんと理解しておけば、EXWやCIFなどの理解も簡単ですよね!
FOBのメリット・デメリットは?
FOBをメリットと考えるか、それともデメリットと考えるかは、あなたの貿易熟練度次第かもしれません。
商売ですから手間が増えれば、手数料を取られてしまうのは当たり前です。
若し船積以降も売り手にお願いするとしたら、船積手配やその立て替え払いと言う負担が増えるので、その手数料は上乗せして請求してくるのが普通と考えられます。
また保険もお願いするとなれば、保険料に手数料を上乗せして請求してくる事が考えられます。
つまりそれらを自分で出来るのであれば、自分の負担は増えますが、それら売り主からの手数料が節約出来る筈なので、直接コストは安くなると考えられます。
貿易に熟練していれば自分の負担と言う間接コストもほぼ0なので、貿易熟練者であれば一番大変ですが一番お得なFOBの方がメリットが大きいと考えます。
しかしながら貿易に不慣れであればその負担が大きくなり間接コストが高くなり過ぎるかもしれませんので、まるっとお願いするCIFなどの方が総合的に安くなり、メリットが大きくなるかもしれません。
また若しかすると売り手が素晴らしいレートを持っていれば、直接コストも意外と安くなるかもしれません。
幾つかの要因の繋がり方次第なので、やはり一概にメリットだデメリットだなどと結論は付けられませんね。
FOBのまとめ
ここまで読んでくださった方は、自分なりのFOBの活用法がイメージ出来るまでになったのでは無いでしょうか?
FOBが理解出来れば、インコタームズにあるそれ以外の貿易条件も理解出来ると思いますので、それぞれ自分の商売に合った条件で円滑な貿易を試みてもらえればと思います。
…私が輸入する立場だったら、節約する為に絶対にFOBを選びますが。(笑)