ものづくりのバリューチェーンの中では、よく検品と言う言葉を耳にするかもしれません。
検品とは読んで字の如し、 ” 製品などを検査すること ” です。
ここでは検品の目的や、その具体的な方法について考えていきたいと思います。
検品作業の目的とは?
検品作業の目的とはズバリ、不良品の仕分けです。
何らかの原因により混入してしまった不良品を、定められた品質基準の下に仕分ける作業が検品と言う大切な作業なのです。
不良品が発生する原因
ものづくりの過程において、不良品が発生する原因は5Mと言うキーワードで分類が可能です。
5Mは以下の要素の頭文字を繋ぎ合わせたものとなります。
- Material = 材料や部品 そもそもの材料が不良品であれば、そこから作り上げられた製品が不良品となるのは当たり前です
- Machine = 機械や設備 人間だけでは無く、機械も老朽化などによりミスは起こり得ます
- Man = 人 所謂、作業者に因るヒューマンエラーです
- Method = 作業方法 そもそもの作業方法が曖昧であったり、不適切であったり、難し過ぎるのも不良品が出来上がる原因と成り得ます
- Measurement = 測定
測定器や測定方法などにより不良品がすり抜けてしまう可能性も否めません
原因が想定出来れば、効果的な検品が実施出来るのでは無いでしょうか。
検品作業の内容
一言に検品作業とは言うもののそれぞれの内容は全く異なり、必要な手順や器具なども全く異なるので注意しなければなりません。
- 耐久検品
破壊検査となるので主に開発時にしか行われませんが、落としたり水に浸けたり過酷な状況を再現しても大丈夫かを検査します - 員数検品
簡単に言えばそれぞれの数量の確認ですが、製造ラインでの組立時や梱包時に数量が不足するのは大問題を引き起こします - 外観検品
小さなものでは顕微鏡やルーペも使われますが、主に目視で行われる検査です - 機能検品
実際に動くかどうかを検査します
工程別の検品作業
ものづくりのどの工程によってかも、検品の性質は変わっていきます。- 受け入れ検品(IQC:Incoming Quality Control)
- 工程内検品(PQC:Production Quality Control)
- 完成品検品(FQC:FinalProduct Quality Control)
- 出荷前検品(OQC:Ongoing Quality Control)
川上から川下にIQC→PQC→FQC→OQCとなっていく訳ですが、川上が悪ければ川下では不良品の山となるのは当たり前です。
しかしながら川上が万全であっても、川下も万全…とはならず原因不明の合成の誤謬が発生している可能性は否めないので、やはり川下の検品も疎かにする事は出来無いのです。
全量検品すべきか、抜き取り検品にすべきか?
本来であれば常に全量検査すべきです。
しかしながら破壊検査を全量してしまえば元も子も有りませんし、単価が低いものを何千個もの全てを検品するのは経済的では有りませんし、時間的にも非効率となってしまいます。
ではどうするのか…統計学を利用して抜き取り検品をするのです。
ここでは細かい説明は割愛しますが、対象ロットの全量(母集団)に対して或る数量(標本)を抜き出して検品すると、抜き出した数量の不良の具合から、統計学的にそのロットの中には不良数がこれ位しか存在しないであろうと言う推測をする事が可能になります。
一部を見て全体を数学的に想像する訳です。
全量と抜き取りの数量のバランスで、全体を再現する確率が変わって来ます。
抜き取りの際に十分に気を付けなければならないのが、ランダムさです。
抜き取った中身が偏ってしまっていると全体像を見誤ってしまいますので、全体の平均像を示す様に、ランダムな抜き取りとなる様に十分注意しなければなりません。
検品で必要な取り決め
検品をする前に、下記の様な項目の取り決めが必要です。
- 検品項目 何を検査すべきなのか、これが最重要の取り決めとなります
- 検品基準・規格 何を以って合格とするのかを明確に定量化する必要が有ります
- 検品方法 基準次第で検品の方法は異なって来ます
- 検品方式 全体最適化となる様に、全量検品か抜き取り検品か決定します
- 検品器具 器具に因り効率も異なりますし、検品誤差もあるので取り決めが必要となります
- 検品場所・環境 目視検査では太陽光の入り具合や明るさなども重要になります
- 作業者と承認者 主観的に判断する作業者と客観的に判断する承認者と、単独では無くペアになるのが望ましいと考えられています
またコストと大きく関わりますので、各項目の作業時間を見込んでおくことも大切となります。
検品書・検品成績書
仕事に於けるどの作業も、記録が無ければ行った事にはなりません。
特に検品の場合は手順の明確化も大切ですが、どれが合格で、どれが不合格なのか、またなぜ不合格なのかと言う結果の記録が必要となります。
作業が終わってから記憶に従い記録を行うのでは非効率なので、チェックシートなどを用いて作業をしながら手書きで記録をしていくのが良いでしょう。
全部の検品作業が終わればそれらをタイプアップし、必要であれば対外的に検品成績書を発行します。
検品の結果として、全量検品であれば合格品と不合格品に分かれている事になりますし、抜き取り検品であればロットが合格なのか不合格(=ロットアウト)なのかに分かれる事になります。
検品のまとめ
検品は依頼する側なのか、請負側なのかで見方が大きく変わってくる事になるでしょう。
しかしながら注意しなければならないのが、双方にとって厳しければ必ずしも良くは無いと言う事です。
ものづくりでは常にQCDのバランスが課題となりますが、極端に厳しくすればコストも時間も掛かり過ぎる事になりますので、不必要な過剰品質となってしまい競争力が失われてしまいます。
しかしながら生命の危険に繋がる製品では、万に一つの不具合も許されませんので、検品は対象によって柔軟に対応していく必要のある作業と言えるのでは無いでしょうか。
いずれにせよ記録をきちんと続けるのが第一歩であり、定期的にレビューを行う事により、着実な改善を続けていくしか無いのです。
究極は検品の必要の無いものづくりなのでしょうが、ものづくりに於けるQCDのバランスは永遠の課題と言えそうですね。