ビジネスをしている限り、大切なのは売上とかではなく利益です!
売上は利益の源泉ですが、売上が幾ら大きくても利益が少なければ本末転倒な訳です。
あの稲盛和夫氏も京セラフィロソフィの中で売上最大経費最小が経営の大原則と説いています。
しかしながらその利益の理解を難しくさせているのは、利益は売上と費用の差分と言う結果論なので直接追う事は出来ないと言う構造です。
ではその構造を方程式でMECEに読み解いていくと、利益を最大化する方法論としてどの様な事が見えてくるものなのでしょうか?
先ずは利益の生まれ方を理解する
冒頭にも書きましたが利益はいきなり単独で発生する訳では有りません。
あくまでも下記の引き算により発生する結果なのです。
利益 = 売上 ― 費用
結果である利益をいきなりどうにかしようと考えてもどうしようも無い訳で、利益を出したいのであればその源泉となる売上と費用に対しての努力を考えなければいけないと言う事が分かります。
つまり利益を最大化したければ売上をなるべく多くし、費用をなるべく小さくし、その差を最大化させれば良いのです!
しかしながら間違って悪戯に売上の最大化ばかり狙ってしまうと、若しかしたら費用は指数関数的に増えて肥大化してしまい、その差し引きの結果は決して最大化されないかもしれないと言う難しさを孕んでいます。
だからあくまでも利益が最大化される売上と費用の最適なバランスを追い求めていかなければならない事に注意して進めていきましょう。
売上をなるべく多くするには?
売上を紐解く為に、幾つか存在する売上の方程式の中の一つであるこちらの式に注目してみましょう。
売上 = 顧客数 x 顧客平均単価
こちらの式から、売上を最大化するには顧客数を最大化し、顧客平均単価を最大化すれば良い事がわかります。
この顧客数と顧客平均単価にも相関が有り、単純には顧客平均単価を下げればきっと顧客数は増えていき、逆もまた然りと考えられます。
しかしながらそれでは利益の最大化とはならないので、顧客数の最大化、そして顧客平均単価のそれぞれが最大化する方法を考えていきたいと思います。
顧客数を最大化するには?
顧客と一括に言っても、実はその中に3種類の顧客が居ると考えられます。
- 既存客
- 流出客・・・今まで既存客だったが逃げ出してしまった顧客数をマイナスにするお客様
- 新規客・・・新しく顧客数をプラスにするお客様
既存客の中にはそのまま買い続けてくれるお客様も居る訳ですが、何らかの理由によって買うのを止めてしまったお客様もいらっしゃる訳です。
その様に考えると新規客の中には全くの新しいお客様だけでなく、以前買うのを止めてしまったお客様も含めて良いかもしれません。
顧客数を最大化する為に、流出客を最小化する事、新規客を最大化する事を更に考えていきましょう。
流出客を最小化するには?
お客様はなぜ買うのを止めてしまったのでしょうか?
その原因を想像してみましょう。
- 何らかの不具合で嫌いになってしまった これが先ず想像され、また真っ先に潰していかなければならない内容です。
- もっと良いところが見つかった ビジネスは生き残りの競争なので、良さそうな市場であればライバルは間違い無くお客様を奪い去りにやってきます。
- 買うものが無くなってしまった こちらも深刻な問題ですが、これだけ供給過多の時代に、お客様を満足させ続けると言うのはなかなか至難の業です。
商品の不具合、サービスの不愉快などが想定されます。
その声が聞こえてくれば良いのですが、サイレントマジョリティと言う概念が有る様に、特にネガティブな情報は直接聞こえてくる事は少ないでしょう。
だから若し聞こえて来たとすれば、氷山の一角と理解し徹底的に対処しましょう。
またネガティブな情報は足が速いので、本当に注意して対処しなければなりません。
市場が十分なほど成長をし続ければ競合問題と言うのは起きないのですが、基本的には市場の中ではゼロサムの奪い合いです。
だからどこかの営業マンが顧客を得たと言う事は、反対にどこかのぼんやりした営業マンがお客様を奪われたと言う事になる訳です。
いずれにせよお客様を飽きさせない様にすると言うのが極めて重要で、その為には新商品の開発を続けると言うのが本当に大切な仕事となります。
新規客を最大化するには?
ここでの新規客は、全くの新しいお客様だけでなく、一度以上流出してしまい休眠客となってしまったお客様も対象に考えてみます。
- 認知度を高める 非常に大切な考え方ですが、人は知らないモノを買えません!
- 4つの不を取り除く 4つの不とは不信・不要・不適・不急です。
- 休眠客を取り戻すにはもう一つの不、不満を解消する 一度購入していただいたお客様は不信が無くなっている筈ですが、若しかしたら何らかの不満を抱えてしまっているかもしれません。
だから認知をさせると言うのがとても大切な第一歩となるのです。
営業のローラー作戦と言うのも一つの手かもしれませんが、一般的には広告宣伝と言う手法を駆使する事になるでしょう。
余程ブランド力が有れば違いますが、人は知らない所から買うのに躊躇します。
また不要であれば買う訳が無いので、それが必要な事を説得しなければなりません。
更に必要であったとしても、どうせ買うのであれば自分に合った一番良いモノを買いたい訳なので納得してもらう必要が有ります。
そして最後のハードルが買うタイミングです。お客様の財布は一つなので、その他の買うべき候補を蹴落として一番にならなければならないのです!
それを払拭しない事には戻って来ていただけないので、不満の原因究明からその対策までを実行しなければいけません。
顧客平均単価を最大化するには?
顧客平均単価を紐解く為に、こちらの方程式に注目してみましょう。
顧客平均単価 = 商品数 x 商品平均単価 x 購入頻度 x 購入期間
この考え方は顧客生涯価値(Life Time Value:LTV)に繋がって来ます。
次にそれぞれを最大化する方法を考えてみたいと思います。
商品数を最大化するには?
新商品を開発し続ける事に他ならないと思います。
基本的にはアップセル対策とクロスセル対策になるかと思います。
- アップセル対策 価格帯を垂直に商品展開する考え方となります。
- クロスセル対策 既存品を軸としてそれらのアクセサリーとなる商品を水平に展開する商品開発となります。
基本的には多機能化、高仕様化、使い勝手を考えての軽小短薄化などを目指した商品開発になるでしょう。
その他には競合他社には有り自社には無い商品の穴埋め展開と言うのも有効でしょう。
しかしながら注意しなければならないのが、自社商品内の共食い、カニバリゼーションです。
折角商品数を増やしてもカニバリゼーションを起こしてしまえば、費用は掛かるけれども売上が上がらないと言う本末転倒な展開となってしまうのです。
商品平均単価を最大化するには?
商品平均単価を考えるにあたり、絶対に忘れてはいけないのは商品単価は市場が決めると言う大原則です!
神様の大きな手が市場を掻き混ぜ続けているので、時間が経てば経つほど価格は適正な値に落ち着くものです。
それこそ一時的な先行者メリットや、局所的なボッタクリはあるかもしれませんが、時が経てば経つほど適者生存で市場の価格は適正化され、こんな感じであれば幾らと、自然とそれなりの価格が固まっていく訳です。
ボッタクリでは一時的な大儲けが生まれるかもしれませんが、やがて神様の大きな手に市場から弾き飛ばされてしまう事でしょう..。
だから考えれば考えるほど商品平均単価を最大化させるには、それなりの商品を作らなければならないと言う事です。
まあ、当たり前の話ですよね!
だから重要となってくるのは価格を決定付ける要素の順位を理解する事と考えます。
現場ではプロダクトアウトとなり機能にばかり目が行き勝ちですが、お客様にとっては機能よりも自分がどう感じられるかと言う効用の方が重要です。
効用とはお客様にとってその製品がもたらす効果で、この暖房機は最新の◯◯テクノロジーで△△を何%採用しているので..では無く、健康的にどれくらい温かいのか?と言う様な事です。
では効用が最重要かと言うと..実はそれよりも市場での希少性の方が価格に対する影響度は高いのです。
簡単な例を上げると、どんなに素晴らしい商品でもその商品が市場に溢れていると価格は絶対に下がり続けてしまいます。
市場では競争が起きていますから、同質化の中で生き残る為には誰かが安易に飛び出してしまい値引き合戦が始まり、値崩れしてしまうのは必至だからです。
一方で需要に対して供給が少なければ引く手あまたとなり、どうにか手に入れようとする人達が値上げにどんどんと加担していきます。
売り手が頑張って値段を据え置きにしても、市場ではその買い手がどうしても欲しい人に高値で転売していくのは止められない事でしょう…。
以上をまとめますと、商品平均単価を最大化するには下記の優先順位を考慮した商品開発が望まれると理解できます。
希少性 > 効用 >> 機能 > 手間や負担
現場では手間や負担が掛かっているから高く売りたいと思うでしょうが、それは自分勝手と言う事で、市場は許さないので本当に注意しなければなりません。
また商品平均単価を最大化させる結論としては、お客様に感謝される、市場ではなかなかみつからない、有り難がられる商品を作らなければならないと言う事だと考えます。
購入頻度を最大化、購入期間を最長化するには?
購入頻度や購入期間は商品の特性に因って大きく異なります。
例えば購入頻度に関しては
- 漏れなく買ってもらう、買い忘れしない様にしてもらう お客様は常にその商品の事を考えている訳では無いので、どうしても買い漏らしと言うのは発生してしまいます。
- 最大限使用してもらい、きちんと消費してもらう 買った商品を100%きちんと使うお客様はそれこそ稀でしょう。
- 新しい使い方を知ってもらう 商品によっては使い方次第で様々な効用を持つものも有ります。
- 知財などで参入障壁を築く 若し特許などが取れれば暫くの間は安泰です。
- キャンペーンやロイヤリティプログラム これはどちらかと言うとテクニカルで、どちらかと言うと煽りになってしまうのかもしれません。
- 変わらない為に変わり続ける 飽きられない様にマイナーバージョンアップを繰り返し、いつまでも期待に応えられると言う影の努力も重要です。
先ずはそれが無い様に接触回数を十分持つ様に心掛けなければなりません。
きちんと消費してもらえれば、購入頻度が増えるのは間違い有りません。
商品自体は知っているので、別の使い方も理解してもらえればその消費は倍になる訳です。
例えばラップは災害時に皿を包む事で水洗い不要にしたり、簡単な止血に利用したり、知られていないけれども実は様々な便利な使い方も有るのです。
知財は競合の排斥のみならず、お客様からの目も変わりますので、費用は掛かりますが出来るだけ取っておきたいものです。
あまり大きく変えてしまうと別商品となってしまうので微妙な匙加減がポイントとなるでしょう。
費用をなるべく小さくするには?
費用を考えるに当たり大切なのは、変動費と固定費に分けて考える事です。
また数字を考えるコツとして、大きな塊から考えていかなければなりません。
変動費とは?
変動費とは売上と連動する費用です。
だから売上が上がれば変動費は上がり、売上が下がれば0に近づいていきます。
労務費や商品の部材や物流費などが変動費の中で大きなものとなります。
変動費自体を下げるには大量生産などが考えられますが、売れなければ在庫で苦しむ事となってしまうので要注意です。
作業効率が上がれば労務費は下がりますし、部材に関しては外注先を変えたり、集約したりするのも有効です、
固定費とは?
固定費とは売上とは連動せずに一定金額掛かり続ける費用です。
人件費や地代家賃、メーカーであれば減価償却費などが固定費の中で大きなものとなります。
固定費は固定費と言う名前からわかる様に、なかなか改善するのが厄介な費用です。
固定費を改善するには抜本的な改革が必要となるでしょう。
利益は大きいだけで良いのか?
基本的に大きな利益を求めているので、利益は絶対額が大きければ大きいほど素晴らしい訳です。
しかしながら何事もそうですが、利益もバランスが大切なのです!
費用対効果と言うバランス
大きな利益が生まれるとしても、その為に莫大な投資が必要な場合は慎重にならざるを得ません。
そもそも莫大な投資が必要であれば取り掛かれない人がほとんどでしょうし、若し資金を調達出来たとしても100%成功するビジネスなど存在しないので、大きければ大きいほどリスクは増大してしまう訳です。
だから大きな利益と言う絶対額だけでなく、費用対効果の効率と言うのはやはり無視する事が出来ません。
また同じ考え方で売上に対する利益率が少ないビジネスも心配です。
大きな在庫を抱えてしまうビジネスモデルも同様です。
商品が材料勝ちであれば、資源が高騰した際に簡単に赤字に転落してしまいます。
費用対効果と言うバランスは本当に大切なのです!
Going Concernと言うバランス
ビジネスで一時的に利益を得る事は、実はそんなに難しくないかもしれません。
しかしながらビジネスはGoing Concernを目指さなければいけません。
一時的に過度な利益を得てしまえばお客様は逃げていき、Going Concernとなっていきません。
一時的に利益を貪るのでは無く、Going Concernとしていく為には真っ当な商売に励んでいかなければならないのです。
利益を最大化する方法のまとめ
利益 = 売上 ― 費用
利益を最大化する為には売上を大きくし、費用を少なくすれば良い事がわかりました。
利益 = 売上 ― 費用
= 顧客数 x 顧客平均単価 ― (変動費 + 固定費)
= (既存客―流出客+新規客)x (商品数x商品平均単価x購入頻度x購入期間) ― (変動費+固定費)
方程式を分解していけばわかりますが、利益を最大化するには一つ一つの要素はベタな事ばかりですが、それらを漏らさずやっていく事だと改めてわかりますよね。
リスクを回避するには効率の良いビジネスを狙いたいところですが、効率が良くて絶対額が大きいビジネスはなかなか存在しません。
良いビジネスモデルが出来たとしても、知財などで参入障壁を築けなければ、その市場が良ければ良いほど競合が勇んで参入してくるのは間違い有りません。
また売上や利益を見るには、どの期間単位なのか、またそれをどれくらい続けてみるのかでかなり変わっていくと思います。
いずれにせよGoing Concernとしていくには、真っ当なビジネスをしていかなければならないと言う当たり前の覚悟で頑張っていきましょう!